いのちうごめくライブラリー

新緑が一気に目覚めはじめた春の午後、「癒しと憩いのライブラリー」を尋ねることにしました。
ライブラリーのある伊東まで、東京から日帰りでもじゅうぶんな距離。読書と温泉を楽しみ、ちょっとしたリトリート気分を味わうつもりで、各駅停車に乗り込みました。
天城の山々と相模湾、そして富士山を望むサザンクロスリゾート。絶好のロケーションを誇るその広大な敷地に足を踏み入れると、東京の喧騒が嘘のよう。
ホテルの入口を入り、産道を思わせる廊下を抜けると、開けた空間にライブラリーが広がっています。

全国の読書家から厚意で寄贈され、壁一面にびっしりと並んだ2万冊以上の蔵書も見事なものですが、なかでも古今東西の「癒し」に関する本は圧巻の棚揃え。
さらに驚くべきことに、書架の本はすべて「文脈」というユニークな方法で分類されているのです。
たとえば、「癒し」の分類の一番初めには「ことば」があり、次に「からだ」があり、続いて「生命とは」「健康とは」「病気とは」「治るとは」といった本質的な問いが投げられ、ありとあらゆる種類の癒しの技に関する本が並び、最後は「死」についての本で締めくくられているという具合に。
「文脈」に沿って有機的な配列の中に収められたそれらの本を追い、ライブラリーをぐるっとひと回りすると、まるでひとつの壮大な物語を読んでいるような気になってきます。
補完代替療法や統合医療の研究・実践家、癒しの力に関心のある方、ホリスティックな世界観に共感する方にはたまらない棚揃えですが、そうでない方もご安心を。
「憩い」のコーナーには文芸書、美術書、実用書、伊東の歴史や文化に関する本なども充実していて、どんな嗜好の方でも気軽に利用できそうです。

それもそのはず、このライブラリーのコンセプトは「ブックシェア」。本を愛する方なら誰にでも開かれたスペースなのだそうです。
「癒し」と「憩い」をテーマにしたフェスティバルやアーティストの展示など、遠方から人が集うイベントも開催されるこのライブラリー。
単なる図書館の枠に留まることなく、多様な人を巻き込みながら地域振興の拠点になっていく可能性を感じました。
日帰りでもじゅうぶん楽しむことができましたが、ホテルに宿泊して心ゆくまで自然や温泉を堪能し、心身を休めるのも良さそうです。
次はいつ来ようか、早くもスケジュール帳と相談しています。

村松洋子(代替医療研究家/日本ホリスティック医学協会 運営委員)